(しゅら)

考古学上の大発見−長蛇の列の見学者
 1978年(昭和53年)、大阪府教育委員会が、 三ツ塚古墳の中の八島塚古墳中山塚
古墳
の間の濠の部分の発掘調査を行いました。この調査で
濠の底の部分をさらに1.3
ほど掘り下げた所から、大小二つの木製の「修羅(しゅら)」が発見されました。修羅と
は、重い荷物を乗せて運ぶための古代の木ぞりです。
 大阪府教育委員会が発見の事実を発表したのは4月5日のことでしたが、修羅発見の
ニュースは、考古学上の大発見として全国を駆け巡り、大きな注目を集めました。4月
15日(土)の現地説明会では、修羅を見ようと全国から集まった1万2千人もの見学者が
長蛇の列
をつくり、その時の様子は、いまだに語りぐさとなっています。

市民に広まった「しゅら」の名
 古市古墳群に含まれる多くの古墳が存在する藤井寺市ですがあまり注目されてはいな
かった三ツ塚古墳から修羅が発見されたことは、藤井寺市民にとっても、古代史研究に
おける藤井寺市の存在位置の大きさを再認識させることとなりました。
 この貴重な大発見にちなんで、「修羅」の名はいろいろなことに使われることとなり
ました。ずばり「修羅」という名の和菓子が発売されました。毎年9月に行われる「市
掘り出された大小の修羅
掘り出された大小の修羅
 大修羅の右の棒は、輸送の
時に使用された「てこ棒」と
みられている。  1978年
民まつり」には、「しゅらまつり」の愛称がつけられました。まつりの中では、「しゅら曳き大会」が行われました。
当時は大型の復元修羅を使って大人数で曳くタイムレースを実施していましたが、転倒などの危険が心配され
ここ
数年間は中止されていました。
2013年のまつりで、しゅら曳き大会の復活を目指して小型修羅を使った試験レース
が行われ、翌
2014年の第35回市民まつりでは、中学生以上の1チーム6人によるレースが実施されました。同時に
小学5・6年生チームによるレースも実施されました。
                     ※ 市民まつりは2017年で終了しています
 1994年(平成6年)にできた市立生涯学習センターの愛称は、「アイセル・シュラホール」です。

修羅の復元への取り組み
 1978年(昭和53年)、朝日新聞社が厚生文化事業として修羅の復元に取り組み、それを使った牽引実験を行いま
した
徳之島から探し出したカシの大木を使い、高知市の打刃物師が作った斧(おの)の一種ヨキという道具を使って削
り、発掘した修羅に近いものを目指して、形や綱を通す穴も本物そっくりに造られました。製作の指導は薬師寺金堂
の復元建立などで有名な宮大工棟梁の故・西岡常一氏に依頼されました。
 牽引実験は、重量物運送会社や庭園材料会社が協力し、藤井寺市の東部を流れる石川の河川敷で9月3日に行われ
ました。多くの市民や中学生、自衛隊員など
約400人が牽引の人手として協力し、実際に14トンもある花崗岩を乗せ
て綱で曳く実験が何通りも行われました。約5千人もの見物者が訪れ、堤防から実験を見守りました。
 この事業の経過は朝日新聞紙上でも連載記事で報告され、後に「修羅」という単行本にまとめられて、翌
1979年
11月
に朝日新聞社から出版されています。
 この時の復元修羅は、後に藤井寺市に寄贈され、現在は道明寺天満宮の境内に保管展示されています。小型の復元
修羅を使って曳く速さを競う「しゅらひき」が市民まつりの中で行われたりもしました。
大修羅の引き上げ作業 修羅の保存と展示
 出土した修羅は生駒市にある元興寺文化財研究所14年にも及ぶPEG
(ポリエチレングリコール)
含浸法
による保存処理が行われ、現在は、大阪府
立「風土記の丘」に建設された古墳時代中心の博物館「大阪府立近つ飛
鳥博物館
」(大阪府河南町)に展示されています。
 保存処理のために修羅を地中から掘り出すとき、ブヨブヨして柔らかい
大きな木製品をまるごと地中から引き揚げるのは困難と考え、府教委は、
バラバラに切断して引き揚げる方針を出しました。これに対して、切断せ
ずに引き揚げられないかという声が多数上がってきました。このとき、大
阪市内の重量物運送会社阿知波組(現・アチハ)
費用を負担し切断せず
に引き揚げるとの協力申し出を行い、府教委は引き上げと輸送をこの会社
大修羅の引き上げ作業 1978年
にまかせることにしました。こうして、修羅は切断されることなく、一体のまま保存することができたのです。阿知
波組は、復元修羅の牽引実験
にも協力しました。
 ひと足先に処理が終わった小型修羅は
藤井寺市立図書館の展示室に展示されていますここには、大型修羅のレ
プリカも展示されています。また、小型人形などで作られた大型ジオラマがあり
修羅で巨石を運ぶ様子や古墳築造
の様子などが再現されていて、楽しめる展示です。これは、修羅復元の事業を行った朝日新聞社が事業を記念して多
額の費用をかけて製作し、主催した「よみがえる修羅展
で展示したものを、終了後藤井寺市に寄贈したものです。
市立図書館には、古代史関係の専門書を集めた古代史文庫もあります。
 藤井寺市が古代遺跡や古墳とは切り離せない存在なのだということを、藤井寺市民に強く印象づけることになった
のが、「修羅」発見だったのです。
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